
こんな人に観てほしい:「セフレ」という言葉に憧れがある人へ

「セフレ」という言葉は、響きだけ取り出すとちょっと軽い。──でも、実態としてのセフレって、たぶん「同じ秘密を、長く一緒に持ち続ける関係」のこと。昼間の顔と、夜の顔を、両方知っている少数の人間。
本作は、その「昼間の顔と夜の顔」を、一本の作品の中に詰めて見せてくれる作品です。女優は沙月ふみの。メーカーはunfinished。昼間は地味眼鏡で図書館司書、夜は男好きするドスケベセフレ。ギャップを外から眺めるんじゃなく、両方を自分が握っている側で観る作品。
あらすじ:図書館の貸出カウンター、リモコンスイッチを握る男

舞台はチャプター1、彼女の職場である図書館。地味な眼鏡、ブルーのエプロン、ネームプレート。司書として真面目に働いている。──そして、こちらの手元には、リモコンローターのスイッチ。彼女の体内に、すでに仕掛けてある。
彼女が他の利用者に頭を下げる。「申し訳ございません」「そうですよね」「すぐに新しいもの届くように手配しますので」「すみません」「大変申し訳ございません」──仕事の場面の「申し訳ございません」を、これだけ連続で聞かされる。真面目な司書としての顔を、こちらに先に見せられる。
その「申し訳ございません」の途中で、こちらが、リモコンのスイッチを入れる。──画面の中で何が起きているかは、彼女の表情と、声のわずかな変化でしか分からない。他の客の前で、彼女だけが、自分の身体の中で起きていることを知っている。それを、外から見てる自分だけが共犯している。これが、本作の前半。
見どころ1:「申し訳ございません」と目が合う、その瞬間

カウンター越しに、こちらと彼女の視線が合う。笑顔で接客しながら、ローターのバイブを耐えている目。──「嫌そうじゃない」ことが、一番効きます。仕事中なのに、本当はこの状況を楽しんでいることが、表情に出てしまっている。
レビューには「チラチラ目が合って苦しそうにするが、でも嫌そうじゃない表情がたまらない」とある。「嫌そうにできない」のがこの関係。セフレ歴がそこそこ長くて、もう「嫌そうにする演技」を相手にする気がないところまで、関係が進んでいる。
眼鏡の奥の、地味な顔。地味な顔だからこそ、感じている時の崩れ方が、より強く出る。普段が無表情だから、わずかな変化が大きく見える。「ギャップ萌え」を、生理的に成立させる身体の使い方。
そして、彼女から、こちらに目で伝えてくる。「もう我慢できない」──仕事の途中で、彼女側から限界が来る。自分が握っているスイッチを、彼女の側が「もう降参」と言ってきているこの権力関係が、本作の中盤の感情。
見どころ2:ホテル合流の瞬間、もう発情している

チャプター2、場面はホテルへ。ドアを開けた瞬間から、もうエッチが始まっている。前戯すら省略される。散々焦らされた身体が、合流の0秒で発火する構造。
「もっと舌ちょうだい」「もっと掻き回して」──ベロチューで「もっと舌ちょうだい」を、自分の口で指定してくる人。地味な司書の顔で「申し訳ございません」と言っていた人と、同じ人だと信じるのに、毎回数秒かかる。自分の好みを、行為の途中で言葉にして渡してくる。「セフレ歴」が、ここまで言葉を自由にすることが、分かる。
そして、眼鏡を外す。──チャプター2の冒頭は、眼鏡を掛けたままのキスと着衣での胸揉みがしばらく続き、その後、着衣と一緒に眼鏡も外していく。「眼鏡を外す」という小さな動作が、「司書の顔を、いったん終わらせる」儀式になっている。昼間の顔を脱ぐ瞬間を、ちゃんと見せてくれる。
「もっとたくさん出して」「めっちゃ感じちゃう」「めっちゃ立ってる」──「めっちゃ」。真面目な司書の口から「めっちゃ」が出てくるだけで、もう、別人。この単語の差で、人格の二重性を表現してくる。
最後に:「地味眼鏡」を、自分だけが脱がせる関係

観終えたあと、本当の見どころが、後ろから効いてきます。「地味眼鏡」を、世の中の人は、ずっと「地味眼鏡」のままで見ている。図書館の利用者も、職場の同僚も。──「あの司書、脱いだらどうなんだろう」と、想像すらされない地味な人。
その「想像されない」立ち位置にいる人を、自分だけは知っている。眼鏡の下の顔も、外したあとの「めっちゃ感じちゃう」も。──この情報の非対称性が、「セフレ」という関係の、本当の中身だと、本作は教えてくれる。
「お疲れ様でした」──ラスト、彼女が司書の声に戻って、こちらに言ってくる。仕事終わりの挨拶のような声。昼の顔と夜の顔が、同じ口から、地続きで出てくることが、最後に確認できる。
「セフレ」という関係は、観るより、「自分だけが知っている」を体感するもの。本作は、その「自分だけが知っている」を、図書館のカウンター越しに、73分間貸してくれます。
