
こんな人に観てほしい:求められる理由が「自分の魅力」じゃなくても構わない人へ

女性のほうから迫ってくる作品では、その理由はだいたい決まっています。あなたが好きだから。あなたが素敵だから。あなたが気持ちよくしてくれるから。
この作品には、そのどれもありません。
彼女があなたを選んだ理由は、夫と血液型が同じで、若いから。ただそれだけです。愛情はゼロ。恋愛感情もゼロ。あなたは目的を達成するための手段として、アプリの画面越しに選ばれている。
——ところが、これが異様に効くんです。人柄や魅力を値踏みされる怖さがない。振られる心配もない。求められている理由がはっきりしすぎていて、逆に気が楽になる。そして気楽なまま押し倒され、上に跨られて、目的のために全力で使われる。
自分の価値を証明しなくていい相手に、必死で求められてみたい人。この一本は、その願望をまっすぐ叶えにきます。
あらすじ:結婚2年、子供ができない妻が出した結論

主演は今井栞菜。冒頭、黒い画面に白い文字が浮かび、彼女自身の声がそれを淡々と読み上げていきます。
結婚して2年。友達との会話は子供の話ばかり。だけど私には子供がいない。旦那とは子作りもたくさんしたし、でも、できなかった。今ではセックスレス——だけど妊娠がしたい。
そして最後の一行が出ます。「私は浮気をした」。
言い訳も、葛藤の描写も、ここには一切ありません。事実だけが並んで、次の瞬間には、もう彼女は部屋にいる。相手は、夫と同じ血液型の若い男。危険日を狙って呼び出された、顔も素性もどうでもいい相手です。
彼女が最初に言うのは、こう。「私、浮気するのは初めてで」。そのすぐあとに、「何回でもするので、いっぱいしてください」。初めてなんです、と言った口で、もう回数の話を始めている。この温度差が、この作品の入口です。
見どころ1:腰が止まらないのは、気持ちいいからじゃない

跨られてからが本番です。そして、ここで妙なことが起きる。
彼女、動きながら理屈を説明してくるんですよ。この体勢だと子宮が下に降りてくる。だから精子が届きやすくなる。——学生が実験の手順を確認するような口ぶりで、そう言いながら腰を振っている。
普通、この角度で見上げる相手は、快楽で言葉を失っているはずです。それがこの人の場合、目的が明確すぎて、行為そのものが手順の正確さの問題になっている。冷たいわけではありません。むしろ真剣なんです。真剣に、確実に、孕みにきている。
で、私がやられたのは、その執拗さでした。理屈を語り終えたあとも、同じリズムがひたすら続く。飽きる気配も、疲れる気配も、一向にやって来ない。目的が果たされるまで終わらないと決まっている動きを、真下からずっと見上げ続けることになる。いっそ快楽で我を忘れてくれたほうが、まだ気が楽だったと思います。
見どころ2:発せられる言葉が、全部ひとつの方向を向いている

この作品の淫語は、全部「妊娠」に向かって収束します。
「精子出して妊娠させてください」。「子宮の中に、精子出してくださいね」。奥に、いっぱい、と繰り返される。エロい言葉を言わされているのではなく、要求として言っている。だから圧が違う。
そして厄介なのが、この人には終わる理由がないということです。一度中に出しても、「妊娠してるかわかんないから、もっと」。一度着地したはずなのに、そのたびに振り出しへ戻される。出したものを口で受け取る場面ですら、この人の一貫性は崩れません。ためらう素振りもなく舌に乗せて、そのまま飲み込んでしまう。
この、終わりが設定されていない感じ。搾り取るという行為が、比喩ではなく手順として淡々と実行されていく怖さ。腰の奥がじわっと重くなる感覚が、観ているあいだずっと続きます。
最後に:目的から外れた一言が、いちばん残る

全編77分、彼女はほとんど目的の話しかしません。だからこそ、その合間にぽろっとこぼれる一言が刺さります。
「旦那以外に見られるの久しぶりなので、ちょっと恥ずかしいです」。
——ここだけ、妊娠の話じゃないんです。誰かに見られること、自分の体を人前に晒すこと。それが久しぶりだった、と彼女は言う。この一言があるだけで、この人は子供を作るためだけの装置ではなくなる。ずっと見られていなかった人が、ようやく見られている。その事実に、本人が少し戸惑っている。
そして最後まで、彼女は終わりを宣言しません。まだ分からないから、もう一回。観終えたあと、あなたはたぶん、少し呆然としているはずです。あんなに一途に、あんなに目的だけを見つめて求められる体験は、そうそうありません。
愛されなくてもいい。必要とされたい。そう思ったことがあるなら、この一本は完璧に効きます。
