
こんな人に観てほしい:「選んでください」を、三人から同時に言われた経験がない人へ

「私を選んで」を、人生で一度でも言われたことがある人は、まだ恵まれている。それを三人から同時に、しかも「入学式の次の日から書いてた」というラブレターを持って、目の前に並ばれる経験となると、たぶんゼロ。
本作はその「ゼロ回」を、自分の人生に差し込んでくれる作品です。女優は逢沢みゆ、北岡果林、西元めいさ。メーカーはKMPVR-彩-。「彼女にふさわしいのは私だよね」を、笑顔で奪い合う三人を、目の前で観察する側になる時間。
あらすじ:「もしかしなくてもそれって、ラブレターですよね」

舞台は学校の教室。まず、隣のクラスの逢沢みゆから、ラブレターを渡される。「あの、隣のクラスの、逢沢って言います」──1通目。
しかし、その直後。北岡果林が現れる。逢沢から渡されたばかりのラブレターを目撃して、「もしかしなくても、それってラブレターですよね」「逢沢さんって、思ったより積極的な方なんですね」と指摘してくる。そして、彼女自身も自分のラブレターを差し出してくる。「そちらを読む前に、こっちを読んでほしいな、と思って」「急に、すいません」「返事は、気が向いた時でいいので」──2通目。最初のラブレターのインクが乾く前に、二通目が乗ってくる。
そして、さらにもう一人、西元めいさ。「二人よりも、多分先に」「なんなら、入学式の次の日から、気になってて」「書いたけど、渡せなくて」「埃かぶってるかもしれないんですけど、よかったら読んでください」──3通目。「入学式の次の日」。先制点を、三人目が一気に持ち去る。ラブレターの古さで、勝負を仕掛けてくる。
見どころ1:「私が一番、長く好きだった」── 順位の主張

三人が同時に揃ったところで、序列の主張合戦が始まる。「本命の彼女が目の前にいるっていうのに」「ちょっとみゆちゃん、何言ってんの」「私だって、この人のことが、ずっとずっとずっと前から好きだったんだから」──「ずっとずっとずっと」の連発。「ずっと」の回数で、好きの長さを上書き合戦している。
「果林ちゃん甘いなあ」「私なんて、入学式の次の日には、ラブレター書いてたよ」「それは嘘でしょ」と、私が一番長く好きだった、という主張を、ふざけたニュアンスで包んで投げてくる。重い告白を、軽い口調で渡してくる。
「でも、絶対、私が一番可愛い」「私が一番好きだもん」「え?私でしょ?」「ねえ、誰なの?」──「私が一番」の連呼。「一番」を主張する側面が、可愛さ、長さ、好きの強さ、と、項目ごとに分かれて競り合う。
そして、決着方法の提案。「じゃあさ、誰がこの人の彼女にふさわしいか、あれで決めない?」──「あれ」を提案した側が「そしたら私の圧勝になっちゃうけど、いいの?」と自信を見せる。それに対する反撃。「確かに、果林ちゃんは強いけど、私、あなたとの赤ちゃんが欲しいの」──「赤ちゃんが欲しい」は、要するに中出しの権利を主張するということ。勝負のフォーマットが、ここで「彼の中出しを誰が受けるか」にスライドする。「赤ちゃん」が、勝負の駒として、教室の机の上に置かれる。
見どころ2:「あなたと結ばれるのは私だよね」── 中出しを巡る攻防

「絶対、中出ししちゃダメだよ」「私のために、ちゃんと精子取っといてね」「あなたと結ばれるのは、私だよね」──「中出し」を、誰が受けるかを、三人で取り合う構造。
「なんで最初、みゆちゃんなの?」「ずるい」──「順番」の不平等を、リアルタイムで主張してくる。「一番」を奪い合っていた競争が、ここで「中出しの順番」に翻訳される。
「でも今、私がいいって、再確認したでしょ?」「ほら、だって腰、ビクビクしてるじゃん」「反応しちゃってるじゃん」──こちらの身体の反応を、三人がそれぞれ、自分にとって有利な証拠として読み上げてくる。同じ反応が、三つの違う主張の根拠になる。法廷みたいな部屋。
「やっぱり、私が一番好きってことだよね」「いっぱい出して、証明して」「私のことが一番好きって」──「証明して」。愛は、射精の宛先で証明される、というルールが、教室の中で確立されていく。
最後に:「私で最後にして」と「返事待ってるね」

「やっぱり、私が両思いなんだ」「いっぱい出た」「ずるい」「なんで、まだ固いの?」「全部出したんじゃないの?」「まだ、他の二人としたいんでしょ」──「他の二人としたいんでしょ」を、はっきり言葉にしてくる。三人いる、ということを、忘れさせない話術。
「早く入れて」「もう、さっさと決めちゃおう」「私で最後にして」──「最後」を取りに行く戦略。最初に挿入された人が「一番好き」ではない。最後に挿入された人が「一番好き」、というルールに、ゲームのルールが書き換えられていく。「好きな人って、気持ちが変わっちゃうんだから」──こちらが選ぶ前に、ルールが何度も変わる。
そして、夢の終わり。「手紙もらうね、彼女は私で決まり」「じゃあ、誰の告白受けるか、決めておいて」「返事、待ってるね」──散々、勝手にゲームのルールを変えてきた三人が、最後の最後で、「決めるのはあなたね」と、こちらに丸投げしてくる。
──ここまでが、夢でした。
そして、目を覚ました現実。同じ三人が、今度は性的な争奪戦ではない形で、こちらの前に現れる。まず一人が、いつもと違う格好で現れる。「どう思います?変じゃないですかね?」「似合ってる」「驚かせてしまいましたね」──男性の好みをネットで調べて、その服を選んできたということが、続けて明かされる。「ネットでいっぱい調べて、男性はこういうのがお好きということで、もしよかったら、私に着させて」──夢の中の中出し争奪とは違って、現実では「ネットで男の好みを調べる」という地味で真面目なアプローチ。続いて他の二人も合流。「誰が彼女にふさわしい?」「いいですね、賛成です、でも私負けませんから」──夢で見た三人の争いが、現実でも「彼女になりたい三人」として、別の温度で続いている。
観終えたあと、思います。「選んでください」を、人生で一度も言われずに生きていく人は、たくさんいる。本作は、それを三人から同時に、夢の中では性的に、現実では真面目に、両方の温度で言われ続ける経験を、貸してくれる作品です。選べないことの幸福を、ここまで丁寧に描いた作品は、なかなかない。
