
こんな人に観てほしい:「秘密の彼女」をまだ諦めきれていない、全員

クラスに一人だけ、誰にも届かない場所にいた女の子。彼女の隣にいられるなら、教室の机一個分の距離だっていいと思っていた、あの感覚。
社会人になってずいぶん経った今でも、ふとした瞬間に、あの距離が恋しくなることがある人。本作は、その「決して報われなかったはずの距離」を、もう一度だけ書き換えにきます。書き換えながら、ちゃんと当時の苦しさも一緒に蘇らせてくる。懐かしさの方が興奮より先に来る、という珍しい体験のVRです。
あらすじ:「好きなところ5個書いてきて」

女優は井上もも。メーカーはムーディーズ。彼女の初VR作品。
設定はこうです。クラスのアイドル・ももは、僕の秘密の彼女。誰にも言えない、二人だけの関係。
放課後の教室、夕日が机を斜めに照らす中、ももが切り出します。「関係って隠す必要あるの?こうやってさこそこそ話すのもそうだけど、私のこと本当に好き?」。そして紙を渡してくる。「この紙に、私の好きなところ5個書いてきて」。
宿題です。彼氏としての宿題。「言わなくても伝わる」が一番危ない、と知っている子の試験。提出された紙を読み上げるももは、優しいところ、和ませてくれるところ、感情を素直に出すところ……と一つずつ確認しながら、最後の「ももの全てが大好き」で、ようやく笑う。「いいこと書くじゃん」。この一言で、関係の確認が完了する。
見どころ1:「私は、一人でしちゃってるんだけどさ」

ここからがこの作品の本領です。
「テスト期間始まるからさ、しばらく会えなくなっちゃうね」「じゃあ約束。テスト期間終わったら、いっぱい二人で、エッチなことしよ。約束だよ」──そう交わした約束を抱えて、二人は試験勉強の日々に入る。
そして、テスト期間中の放課後の教室。ふっと残された二人だけ。ももが、僕の様子をじっと見て言うんです。
「気持ち悪くなってんだけど。本当、我慢できてないんじゃない?一人でしちゃってるんでしょ」
──見抜かれている。視線とか、座り方の細かい部分から、見抜かれている。クラスのアイドル相手の見抜かれ方。普通なら最悪なんですけど、この子は次にこう言うんです。
「私は、一人でしちゃってるんだけどさ」
これがこの作品の急所です。自分も同じだと、先に言ってくれる。「お前は我慢できてない、最低だな」じゃなくて、「お互い我慢できてないね」のフレームに直してくれる。罪を半分こにしてくれる優しさ。
そのまま教室で「付き合ってよ」と誘われる。机に座らされた状態で、夕日の差す教室で、ももの口の中。ここで一度、口で受け止めてもらう。「続きはいっぱいしようね」。
これが「テスト期間中」の話だということを忘れないでください。約束はまだ守られていない。これは前菜です。
見どころ2:「制服で入れちゃったね」のラブホ

テストが終わって、二人で制服のままラブホテルへ。アジアン雑貨風の薄暗い室内、扉が閉まった瞬間、ももがぽつりとつぶやきます。
「先輩から聞いてたけど、本当に制服で入れちゃったね」
この一言が、この作品で一番ぞわっと来る場面です。「先輩から聞いてた」──つまり、ももは事前に友達から、制服のままラブホに入った先輩の体験談を仕入れている。今夜のための予習。「制服のまま入ると、こんな気分になるよ」とアドバイスを受けている。ピュアな顔をしながら、ちゃんと頭で準備してきている。この情報の不均衡が、効きます。
「私も緊張してる」「いっぱいいちゃいちゃしようね」と笑いながら、シャワーも浴びずに重なる。「まだシャワー浴びてないけど、我慢できなさそうだね」。テスト期間中ずっと我慢していた約束が、ここで爆ぜる。「キスするのも久しぶりだね」──たぶん、テスト期間中、本当に一回もキスしていなかった。禁欲が長ければ長いほど、最初の接触の温度は上がる。
服を脱がし合いながら「私だけ裸はずるいよ」と、彼女からも脱がそうとしてくる。胸を見られた瞬間、「恥ずかしいからそんなに見ないで」と俯いてしまう仕草。苺チョコ色の濃い乳首が、夕暮れの薄明かりに浮かぶ。それを見て、こちらの呼吸が一段落ちる。
挿入も彼女から。「チンチン入れていい?」「動いていいよ」と、ぎこちなく主導してくる。演技がたどたどしいんです、本当に。でもそのたどたどしさが、初めての本気の関係をしている人の自然な揺らぎに変換される。「ずっと見つめてるから恥ずかしかったよ」「本当に好きで、気持ちよくて」。「好き」と「気持ちいい」を同じ呼吸で繋げてくるのが、現役JKの語彙の勝利です。
最後に:あの教室を、もう一度通る

ラブホの薄暗い部屋、汗が引いて、二人の呼吸だけが聞こえている。ももの背中が、シーツの上で小さく上下している。ここに来るまでに、二人がちゃんと積み重ねてきたものがあった。
紙に書かされた「好きなところ5個」。テスト期間の禁欲。「私も一人でしちゃってる」の告白。先輩から聞いてきた予習。全部が伏線として効いている構成。だからこそ、最後の挿入のシーンが、ただのセックスじゃなく、長い段階を経て解放された二人の到達点として残る。
観終えたあと、あなたはたぶん、自分の高校時代の教室の窓側の席を思い出します。あそこに座っていたあの子と、もし──と。叶わなかった想像を、この作品が77分だけ預かってくれる。「あの頃に戻りたい」じゃなく、「あの頃にこういう放課後があったらよかった」と思わせてくる。そういう、優しい嘘の作品です。
