
こんな人に観てほしい:後輩に一度でも「救われた」ことがある人へ

ロケ終わりの深夜、自販機の前で無言で水を飲んでいる瞬間。台本の赤字だらけの原稿を何周も読み返して、目が滑ってくる瞬間。そういうとき、ふっと横から「先輩、これ見てくださいよ」とフリップを差し出してくる後輩がいる人。
その後輩の笑顔に、何度助けられてきましたか。救われてきたくせに、「可愛いな」と思っているのを毎回押し殺してきましたか。本作は、押し殺していたその感情が一晩だけ解禁される、80分の話です。
あらすじ:デビュー前夜の、深夜オフィス

女優はめいさちゃん(=西元めいさ)。メーカーはunfinished。
設定はこうです。来週、ディレクターデビューを控えた入社3年目の僕。深夜の会社でフリップのチェックをしていると、後輩ADのめいさが紙束を持ってやってくる。白+黄色ラインのADっぽい作業Tシャツ、クリーム色のパンツ、黄色のソックス。片付かない黒革ソファの上で、今日の原稿を見せてくる。
「明日のフリップやっと上がりましたよ」
タイトル──「幸せ美人になる方法」。内容は、見つめ合う、笑顔、スキンシップ、ハグ、適度な運動、そして「幸福を呼ぶベロ出し運動」。AD仕事のリアリティに、めいさの体温が混ざっている。そこで彼女が言うんです。「終電終わっちゃいましたね。今日この後、飲みに行きません?」。会社で缶を開けて、サシ飲みが始まる。
見どころ1:「ファクトチェックしましょう」

この作品の仕掛けが、本当によくできているんです。
酔いが回ってきた後輩が、急に言い出します。「あのベロ出し運動、私たちで検証した方がいいですよ」。フリップの内容のファクトチェック。これが免罪符です。仕事の一環、ということにすれば、深夜の会社で年下の後輩と向き合って何をしていても、それは業務の延長。
そこからが一直線。ベロを出して顔を近づけてくる。「近くで見てください」「口をすぼめるのもいいんでしたっけ」。舌の位置を確かめる距離で、先輩が息をのむ。次は「見つめ合うといいんでしたっけ」。仕事用の真面目な顔で、まじまじと目を覗き込んでくる。「ちょっと恥ずかしいかも」と言いながら、目をそらさない。そしてハグ。後ろから回されて、「これが本当のハグですよ」。
極めつけが、これ。「ハグしながらいっぱいチューしたらめちゃめちゃ効率いいんじゃないですか?」。効率。業務効率化。あなたが日々の仕事で使ってきた言葉を、ここで持ち出してくる。これで断れたら人間じゃない。
キスが始まると、止まらなくなります。ベロが絡む、唾液が糸を引く、めいさの目が仕事モードから女の顔に切り替わる。「チューするたびにチンチンビクビクしてますよ」「我慢しないで出していいですよ」。そしてここで前半のクライマックスが訪れる──「出す瞬間もチューしてあげますよ」。ベロを絡めたまま、手コキで発射させられる。キスで締めくくられるフィニッシュって、そうそうない。この構成自体が、この作品の美味しさです。
見どころ2:「続きしたいんですか?」の条件交渉

一度出して、本当なら終わり。「飲みすぎちゃったかもしれないです」「眠くなってきちゃいました」と、めいさはしばらく呼吸を整える。ここで先輩が、彼女の身体にそっと手を伸ばす。
気づいた彼女が言うんです。「おっぱい触ってるじゃないですか」「私今日ブラしていくの、続きしたいんですか?」。
責めているようで、誘っている口調。さっきまでフリップのファクトチェックと言って主導していた後輩が、ここでは先輩の欲望に気づいた側のふりをする。主導権を巧妙に明け渡しながら、「先輩が私のこと気持ちよくさせてくれたら、考えます」と条件交渉に持ち込む。「考えます」と言ってる時点でもう全部決まっている。委ねているようで、委ねていない。
そこから正常位、対面座位、騎乗位。挿入中もキスが途切れない。顔の距離が終始数センチ。「これ以上したらおかしくなっちゃいますよ」「先輩としたいです」。仕事で何度も見てきたあの笑顔の、一番奥にあったものが、いま目の前で溶けている。
最後に:明日の朝、何食わぬ顔で「お疲れ様です」と言われる

観終えたあと、あなたはきっと、朝の会社を想像します。
昨夜あれだけのことをして、彼女は明日の朝、また同じADの作業Tシャツで出社してくる。「先輩、お疲れ様です。今日はディレクターデビューですね」と、何食わぬ顔で。画面の外側で起きるはずのその「翌朝」を想像した瞬間、この作品のほんとうの味が分かります。
深夜のオフィスで起きた出来事は、記録には残らない。フリップのファクトチェックは、たぶん報告書には書かれない。でも、あなたの身体の中には、あの舌の動きと、あのキスの回数が、ちゃんと保存されている。
一度でも後輩に救われたことがある人は、観終えたあと、自分の職場の誰かの顔を思い出します。そしてたぶん、次に飲みに誘われたとき、少しだけ返事に迷うことになる。そういう副作用のある作品です。
