
こんな人に観てほしい:「優しさ」が狂気に変わる瞬間に弱い人へ

優しい嫁、というキャラクターが本当に優しいだけだと思っているあなた。一度、立ち止まってみてほしいんです。
家事を手伝ってくれる、義父の話に頷いてくれる、亡き義母を労ってくれる、晩酌に付き合ってくれる──このすべてを「観察」だと考えたら、どうでしょう。観察された側は、自分のすべての行動が記録されていることに気づかない。本作は、「優しさ」が「観察」に変わり、観察が「逆夜●い」に着地する105分です。
あらすじ:気晴らしのつもりが、無期限の同居になる

女優は本多そら。メーカーはマドンナ。彼女の初VR作品。
主人公は妻を5年間看病して見送った男。広い実家にひとり残された父を、息子のたかしが同居に誘う。「気にすんなって、おやじ。あんなに広い実家にいたって暇でしょうがねえだろ」「こっちで一週間くらい気晴らししたらいい」。父親想いの、いい息子。和室を提供してくれる。
息子の嫁・そらさんも歓迎してくれる。「お父さんが来た方が、家も明るくなるし」「とっても楽しみです、これから」。完璧な嫁の顔。だが、その口から漏れる言葉が少しずつおかしい。「たかしさん、二人だと全然喋ってくれないし、お酒飲んだら先に寝ちゃう」「お父さんはお酒飲みますよね、一緒に晩酌しましょう」。
夫の不満が、自然に義父を持ち上げる文脈に組み込まれている。この比較話法が、この作品の前半で延々続きます。
見どころ1:洗濯物と、ティッシュ

そらさんは、家事を一緒にやろうとする義父に、こう言うんです。
「お父さんの下着は、私が畳みますからね」「もし下着出ても、ほっといてくださいね、そのまんま」
家事を全部引き受ける、ありがたい申し出。──ところが、洗濯物の中には当然、夫婦の下着が混ざっている。義父が手伝おうとして、嫁の下着が出てきたとき、どんな顔をするか。それがこの伏線の本当の回収場所になります。
そして夜中。寝ている義父の枕元に、そらさんがやってくる。「寝てて我慢できませんでした」。彼女が言うんです。
「お父さん、いまだに一人でしてますよね」
「捨てようと思って見ちゃいました。箱に、たくさん、お父さんが捨てたのがあって」
「私の下着、畳んだとき、お父さんもしたよね、今みたいに」
──全部、見られていた。義父が嫁の下着を見ながら処理していたゴミ箱の中身、その回数、その夜の頻度。家事という名の観察で、彼女はずっと記録していた。そしてその情報を、いま、一番効くタイミングで突きつけてくる。
「お父さんが捨てたんだって思って」「お父さんとしたいって思っちゃいました」。罪をすでに掴まれている状態で、許しを差し出される。断れる男はいない。
見どころ2:「全然乳首敏感じゃなかったけど」

夜●いから本番に流れ込んでも、彼女のセリフは止まらない。むしろ、ここから本領を発揮してきます。
「やっと二人の時間ですね、お父さんこういうの好きじゃないですか?」「お父さんと二人になりたかったって、ずっと思ってました」。
そして、決定的な一言。
「全然、乳首敏感じゃなかったけど、お父さんに触られてから、大好きになっちゃいました」
これがこの作品の急所です。夫に開発されなかった性感帯が、義父の指で初めて目を覚ます。身体の所有権が、完全に移行している証拠の一文。妻として夫と過ごしてきた身体が、いまここで、別の男の指先で書き換えられていく。これは浮気じゃない。乗っ取りです。
夫(息子)が同じ家で寝ている。そらさんは騎乗位で「たかしさん、起きないかな」と耳打ちしながら、腰だけは止まらない。種付け懇願ピストン。射精しても抜かない、何度でも中で出させる。「夫に内緒で孕ませて」を行為で実行してくる。
ここに来て、冒頭の「外出たら夫婦に見えちゃうかも」という冗談の意味が変わります。彼女、最初から、本気だった。
最後に:「これからもよろしくお願いしますね」

朝が来て、そらさんは満足した笑顔でこう言うんです。
「私ばっか誘ってるけど、今度からお父さんが誘ってくださいね」「お父さんとしたいんですから、元気づいてください」「私が全部受け止めますね」「お父さんの笑顔大好きなんです」「これからもよろしくお願いしますね」。
「これからも」。一週間の気晴らしの予定は、もう存在しない。同居は無期限になる。息子は、自分が父親に提案した「優しさ」が、自分の家を内側から書き換えていく未来を、まだ知らない。
観終えたあと、不思議な感覚に襲われます。この嫁、本当に悪い女なのか? 5年間妻を看病して何ももらえなかった義父に、自分の身体ごと「労い」を渡している──そう読むこともできる。罪の質量と、優しさの質量が、同じ秤に乗っている。だから観終わっても、後味が決まらない。後味が決まらないまま、もう一度観たくなる。それがこの作品の中毒性です。
