
こんな人に観てほしい:ヌキ目的で借りて、最後に泣かされてもいい人へ

「中出しが夢の地縛霊」──このパッケージを見て、コメディタッチの軽いヌキ作品だと思って手に取る人が、ほとんどだと思います。実際、前半はその通りです。寝てても、トイレでも、ことあるごとに「エッチしよー」とつきまとってくる幽霊の、笑える同棲コメディとして始まる。
でも本作は、最後に必ず泣かされます。女優は香水じゅん。メーカーは本中。「中出ししてほしい」という願いの裏に隠された、本当の理由が、ラストで全部回収される。ヌキにきたはずが、エンドロールで目元を拭っている──そういう作品です。
あらすじ:「私のこと、見えるん?」── 事故物件の地縛霊

舞台は、月3万4千円の格安物件。家具付き、駅近、好条件。──ただし事故物件。入居初日、主人公の前に、可愛い地縛霊の女の子が現れる。「私のこと、見えるん?」──何年も誰にも気づかれず、触れられず、ここにいた彼女が、初めて自分を認識してくれる相手に出会う。
彼女は自分を「じゅん」と名乗り、そして主人公を「太郎」と呼び始める。「太郎にそっくりなんだもん」「私が昔好きだった太郎」──昔好きだった男の子に似ているから、という理由。この「太郎」という呼び名が、ラストの伏線になっています。
そして、彼女の願いが明かされる。「私、生きてた時にエッチなことできなかったから」「太郎に中出ししてほしいなって」「私は妊娠しないよ、だって幽霊だし」──生前に叶えられなかった「中出し」を、夢として抱えたまま地縛霊になった。明るく無邪気にエッチをねだる姿が、後から効いてきます。
見どころ1:「エッチしよー」とつきまとう、笑える同棲コメディ

前半は、とにかくじゅんがエッチをねだり続けるコメディ。「目覚めのチューしてあげるねー」「中出ししよう」と、朝も昼も誘ってくる。でも主人公は真面目で、「結婚するまではエッチしない」と頑なに拒む。「太郎のバカー」と拗ねる彼女のやり取りが、ひたすら可愛い。
寝ている主人公に、こっそりいたずらもする。「触るだけだから」「起きないなら入れちゃうよ?」と、またがってみたり。でも、本番だけは絶対にしない。「太郎が自分から言ってくれるまで待とう」と、最後の一線は自分で引いている。ねだるけど、奪わない。この線引きが、彼女のいじらしさを作っています。
セクシーな下着を見せて誘ったり、一緒にオナニーに付き合ったり、手で慰めてくれたり──「本番以外」の全部を使って、太郎を振り向かせようとする前半。コメディの体裁のまま、彼女の必死さが、少しずつ滲んでくる。
見どころ2:「エッチしたら、成仏して離れちゃう」── 純愛の逆説

中盤、関係が反転します。あれだけエッチをねだっていたじゅんが、急に誘わなくなる。理由を聞くと、彼女が泣きながら打ち明ける。「もしエッチして、やり残したことがなくなって、太郎と離れちゃうの嫌だなって」「エッチして成仏しちゃうのが怖くて」「だからエッチせずに、このまま太郎と一緒に過ごしたい」
──「中出しが夢」だったはずの彼女が、その夢を叶えたら消えてしまうことに気づく。願いの成就=別れ、という逆説。叶えたい、でも叶えたら終わる。だから、叶えないことを選ぶ。ここで作品の温度が、コメディから純愛に、完全に切り替わる。
それに対して、主人公が答える。「僕が離さない」──この一言で、二人は両思いになる。そして、彼女が覚悟を決める。「太郎がしたいって言ってくれるなら、私、消えてもいい」。消えるリスクを受け入れてでも、好きな人と結ばれることを選ぶ。前半のコメディが、全部この決断のための助走だったと分かる。
最後に:「あの時の子、太郎だったんだね」── 涙の真相

結ばれた後、じゅんは消えなかった。「まだ消えてない。嬉しい」。そして、彼女がふと思い出す。昔、この家がまだ空き家だった頃、小さな男の子が遊びに来たこと。「僕は難しい病気なんだ、病院を抜け出してきた」と言っていたその子は、「また遊びに来るね」と言ったきり、二度と来なかった。
そして、真相が繋がる。「あの時の子、太郎だったんだね」「最初から私たちが触れ合えてたのって、お互いに死んじゃってたから」「幽霊同士なら、触れるって」──主人公もまた、とうに亡くなっていた。幽霊同士だったから、お互いに見えて、触れ合えた。「太郎」と呼んだのは、似ているからではなく、本当に本人だったから。
「ずーっと、ずーっと一緒にいようね」「大好きだよ」──観終えたあと、思います。「中出しが夢の地縛霊」という、人を食ったような入り口から、「二人とも、もうこの世にいなかった」という真相まで、全部が一本の線で繋がっている。ヌキ作品の顔をした、上質な純愛幽霊譚。最後まで観て、初めて本作のタイトルの優しさが分かる、そういう一本です。
