
こんな人に観てほしい:日曜の夕方、部屋が静かすぎると気づいてしまった人

日曜の17時。取り込んだ洗濯物を畳みながら、ふと手が止まる。そういえば今週、家で誰とも喋っていない。テレビをつける。観たい番組はない。ただ部屋に音が欲しかっただけ。……心当たりがある人、いますよね。冷蔵庫を開けて、閉めて、もう一回開ける。あの日曜の静けさは、地味に心を削ってきます。
あるいは、恋人はいるけど共働きで、休みが合うのは月に一度あるかないか。会話といえば「おつかれ」だけのやりとりが積み上がっていく人。もしくは、最近のAVの設定の重さに疲れた人。復讐、寝取られ、禁断の関係。物語はもうお腹いっぱいなんです。好きな人とだらだらしたいだけなのに、その「だけ」が一番手に入らない。
そんな人に、この作品は効きます。劇薬というより、炊きたての白米みたいに。
あらすじ:歯磨きで怒られるところから始まる休日

アイデアポケットの8KVR、主演は西宮ゆめ。役名もそのまま「ゆめ」。あなたと同棲している、共働きの彼女です。そして今日は、久しぶりに二人の休みが合った日。
朝、目を覚ますと、ピンクの下着姿で着替えている最中の彼女。視線に気づいて振り返り、「あ、起きてたの?」「おはよ、ずっと見てたの? もう、エッチなんだから」。そして高らかに宣言されます。「いっぱいイチャイチャするんだからね、今日」。
かと思えば、面倒くさがってキッチンで歯磨きしていたのがバレて叱られます。「めんどくさいといつもキッチンでしちゃうんだから」。でも、へこんだ顔を見たら「かわいいから、今日は許してあげる。でも次したら本当に怒るからね」。怒られてるのに、ちょっと嬉しい。事件らしい事件は、これくらいです。あとは「今日はおうちでゆっくりしよう」と決まった直後、じゃれ合いの延長で「ここ膨らんでない?」と気づかれて、シンクや、コンロの上の鍋が見える生活感まみれのキッチンで、朝の一発目が始まってしまう。タイトルは「2SEX!5射精!キスしまくり密着イチャラブ中出し同棲生活」。看板に偽りなし。でもこの108分の本体は数字じゃない。生活です。
見どころ1:「ありがとう、大好きだよ」の直後に、ひもパン

昼のリビング。ローテーブルにビールとつまみを並べて、宅飲みが始まります。「夜まで我慢できなくて飲んじゃったね」「でもたまには昼から飲むのもいいよね」。昼酒の罪悪感を二人で分け合う、この共犯感がもう完全に恋人なんですよ。同棲する前は飲み屋で飲んだね、なんて思い出話をしていたら、彼女がふっと真面目な顔になって言うんです。「いつも仕事のこととか理解してくれてありがとう」「ありがとう、大好きだよ」。
私はここで落ちました。エロい台詞じゃないんですよ。感謝なんですよ。恋人からの感謝って、湯船に肩まで浸かった瞬間みたいに、防御が全部ほどけるんです。で、ほどけた直後に来る。「もう酔っ払ってきちゃった」「ちょっと酔った雰囲気でやりたいな」。服の下から現れるのは黒レースの下着。しかも「エッチかなと思って、ひもパンにしちゃった」「好きでしょこういうの」。さっきまで感謝で泣かせに来ていた同一人物の犯行です。何気ない休日の顔をして、下着だけ戦闘服。しかもスカートとパンツは自分で脱がず、「スカート脱がして」「パンツ脱がして」と、こちらに任せてくる。自分で用意したプレゼントのリボンをほどく係に、こちらを指名してくるんです。
前戯の途中でぽろっとこぼす一言がとどめです。「買ったばっかりなのに、びちゃびちゃになっちゃった」。さんざん焦らしておいて、先に音を上げたのは彼女の方。「もう入れたいんだけど、いい?」。騎乗位で繋がって、体をぴったり重ねてキスして、「なじんできた?」「本当に相性いいよね」。快感をこらえる顔と歯を見せる笑顔を何度も行き来しながらの、長い長い交わり。終わったあとの一言は「気持ちよすぎたね」。奉仕じゃない。彼女も欲しがっている。最初から最後までずっと両想いのセックスです。
見どころ2:「ごめん、一人で先イっちゃった」

夜の寝室。着替えた彼女は、サテンのスリップに黒ニーハイ姿。キスだけで反応したこちらに「チューしただけで勃起しちゃったの?」と笑って、提案してくるのが、まさかの「見せ合いっこする?」。お互いのオナニーを見せ合う、恋人同士だけに許された夜の遊びです。彼女はM字に脚を開いて自分で触ってみせながら、「濡れてるのわかる?」と挑発してくる。
で、ここで、この休日いちばんの「事件」が起きます。彼女が、先にイっちゃうんです。「ごめん、一人で先イっちゃった。一緒にイきたかったよね」。この照れた謝罪、ズルくないですか。朝からずっと余裕たっぷりに焦らして、寸止めして、こっちをコントロールしてきた彼女が、最後の最後で自分だけ気持ちよくなって、ばつが悪そうに謝る。完璧な彼女の、完璧じゃない瞬間。私はこのシーンがこの作品でいちばん好きです。
お詫びに始まるのが「いっぱい気持ちいいことしてあげるね。乳首好きだもんね」。乳首を舐められながらの手コキで、じっくり丁寧に搾り取られます。そして出し切ったあとの締めがこれです。「これでお互いすっきりしたね」「じゃあ今日はもう寝よっか」。エッチの終わりが、そのまま「おやすみ」になる。ホテルなら帰ります。デートなら解散します。でも同棲は、そのまま隣で寝るんです。
そして翌朝。「おはよう。もう朝?」「一緒にいると安心して寝すぎちゃうね」から、いたずらの応酬が始まる。胸を触り返せば「仕返ししてるでしょ。いいよ、いっぱい触って」。やがて「ねえ、私のもなめて」とねだられ、「もう入れてもいい?」と朝のセックスへ。事後に「じゃあ綺麗にしてあげるね」とお掃除フェラをしていたはずの彼女が、言うんです。「またスイッチ入っちゃって、まだ足りないんだけど」「また入れていい?」。終わらないのかこの休日。まさかの2回戦は、「気持ちいいね」と、どんどん弾んでいく声と笑い声つき。最後は正常位で、泣きそうなほど切ない顔から、幸福感いっぱいの笑顔へ。快感の頂点じゃなく、笑顔で終わるんです。
最後に:「ありがとう、大好きだよ」に勝る淫語はない

甘々なバイノーラル淫語満載を謳う作品で、一番心拍数が上がったのが、昼飲みの途中の「ありがとう、大好きだよ」でした。派手なイベントも、泣ける展開も、どんでん返しもない。歯磨きを叱られて、昼からビールを飲んで、感謝を伝えられて、エッチして、寝て、起きて、またエッチする。それだけです。
西宮ゆめがこの作品でやっているのは、ただひとつ。「ずっと機嫌のいい恋人」です。断言しますが、それが一番難しい。焦らして、先にイって照れて、笑って眠る。その全部が地続きで、どこからが本番なのか境目がない。生活と性の間に、仕切りがないんです。
観終えてヘッドセットを外した部屋は、相変わらず静かです。でもその静けさの中に、「誰かとだらだら過ごす休日」をもう一度自分の人生に取り戻したくなる火種が、確かに残っている。この作品を観終えたあと、あなたはきっとこう思うでしょう。「欲しかったのは刺激じゃなくて、この温度だ」と。何も起きない一日が、どれほど贅沢か。ゆめが全力で教えてくれます。
