
こんな人に観てほしい:かつて「身体だけの関係」を持っていた人へ

あなたにも一人くらい、いませんでしたか。名前を思い出すだけで、会話の内容じゃなくて肌の温度が先によみがえる相手。付き合ってたわけじゃない。好きだったかも分からない。でも身体が覚えている。
同窓会の帰り道、駅のホームでふと立ち止まったことがある人。あの頃の自分は何も持っていなかったけど、身体だけはいつも熱かった。そういう記憶に蓋をしてきた人に、これは効きます。
あらすじ:行きつけのラブホ

女優は竹内有紀。メーカーはマドンナ。
久しぶりに幼馴染の有紀とサシ飲み。居酒屋の座敷でビールを傾けながら、彼女は開口一番「結婚したんだ」と言い、次の瞬間には旦那とのレスを嘆いている。「知ってるでしょ、私が性欲強いの」「1日に3回オナニーしてる人が、週1回のセックスで満足できると思う?」。この女、昔から何も変わっていない。
で、「この後あるでしょ?」と笑う。2軒目かと思ったら——「私たちって言ったらここに決まってんじゃん。行きつけのラブホテル」。行きつけ、ですよ。元セフレの幼馴染と再び身体を重ねる一夜が、こうして始まる。
見どころ1:シャワーで聞こえた、旦那にはできないこと

正直に言います。セックスよりも、シャワーの方がやられました。
1回戦が終わった後、有紀がこう言うんですよ。「話は別にあんま相性良くないと思う。でもさ、体の相性だけだよ」。好きとか嫌いとかじゃない。身体だけが正直に噛み合ってしまう関係。それを平然と口にできる女。
で、バスルームに移動して一緒にシャワーを浴びるんですけど、ここでぽろっと出てくる。「旦那と一緒にお風呂入ったことないんだよね」「セックスした後にお風呂でイチャイチャしたいんだよね本当は」。旦那はサウナが好きだけど一人で行きたがる。誘ってくれない。
ここであなたは気づくはずです。この女が本当に欲しかったのは、セックスじゃない。セックスの「後」にある時間だった。身体を洗い合いながら、湯気の向こうで彼女の指がだんだん洗うこと以外を始める。その切り替わりの瞬間——洗ってるだけのはずの手が、明らかに別の意図を持ち始める瞬間に、腹の底がぎゅっと掴まれる。
旦那にはできなくて、元セフレの自分とだけできることがある。その事実が、風呂場の湿った空気の中で、じわじわ効いてくる。
見どころ2:持参した制服が、タイムマシンになる

2回戦の前に、有紀がカバンから取り出したもの。制服。白シャツにピンクチェックのスカート、リボン。「懐かしくない?」と笑う。
で、面白いのが、この女、自分だけじゃなくて男にも衣装を着せるんですよ。「自分もやるからね。持ってきたからほら。はい、なりきってください」って。二人で制服着て、写真まで撮る。「これバレたら旦那に怒られちゃう」と笑いながら。
そして、こう言うんです。「学生の時やばくなかった?休み時間に10分くらいの休みでトイレとかでめっちゃしてた」。
ぞわっとしませんか。制服に着替えた瞬間から、声のトーンが変わっている。大人の愚痴を言っていた人妻が、学生の頃に戻っている。でも身体は大人のまま。あの頃よりずっと敏感で、ずっと貪欲で、ずっと自分の快楽に正直になった身体が、学生の制服の中で疼いている。制服がタイムマシンになっている。騎乗位で腰を使いながら求めてくる声を聞いた瞬間、あの頃の記憶と今の身体が短絡して、脳がバグる。
最後に:身体の記憶は、結婚では消えない

最後に有紀が言う。「結婚したけどさ、あんたのセックスが——」。その先は途切れる。でも意味は分かる。分かってしまう。
結婚しても、環境がどれだけ変わっても、身体の相性だけは嘘をつかない。そういう残酷で、甘い事実を、この作品は突きつけてくる。
観終えたあと、あなたはたぶん昔の誰かのことを思い出す。会話の内容じゃなくて、肌触りを。そして「あいつ、今ごろ何してんだろう」と、スマホの連絡先を開きかけて、やめる。やめるんだけど——やめきれない夜が、一晩だけ続く。
