
こんな人に観てほしい:「別に関心ないし」が口癖になっている人

コンビニで目が合った店員さんに「ありがとう」と言おうとして、結局言わなかった経験ありませんか。「別にそこまでしなくても」。飲み会のコール、ノリきれない。カラオケのマイク、回ってきても「いいよ俺は」。いつからか、感情を出すことにブレーキをかけるのが当たり前になった。
欲望も同じです。電車で目の前に綺麗な人が立っている。視線をどこに向けていいかわからない。靴先を見る。窓を見る。スマホに逃げる。あなたは一日に何回、自分の中のスイッチを切っていますか。多すぎて数えたことすらないでしょう。
この作品は、そのスイッチを入れに来ます。しかも入れるのはあなたじゃない。白衣を着た4人が、あなたの代わりに入れてくれる。「反応するのは自然なことなので」「元気な証拠ですよ」。あなたがずっと隠してきたものを、彼女たちは「正常です」と言い切る。
あらすじ:「検査ですから」で始まる、全員が共犯者の204分

飲み会の「まあ一杯だけ」。全員わかっている。一杯で終わるわけがない。でもその建前がないと始められない。この作品の「検査ですから」は、あなたの「一杯だけ」と全く同じ構造でできています。
人間ドックに来た。受付に4人のナースが揃って待っている。体温測定、聴診器、脈拍。最初は完全に本物の検診。「吸ってー、吐いてー、問題ないですねー」。ここまでは誰も疑わない。
で、ここからです。「当院では精液検査っていうのがあって」。聞いたことない。当たり前です、存在しないから。でもこの存在しない検査名が、本物の看護師にしか聞こえない丁寧な敬語で差し出される。フェラチオは「吸引力の検査」。挿入は「室内でペニスの状態確認」。あなたの理性は「おかしい」と叫んでいる。でも身体はもう従っている。
4人のナースがチャプターごとに入れ替わる。丁寧な敬語で検査の建前を組み立てる西元めいさ。2人同時に攻めてきて建前にヒビを入れる北岡果林と逢沢みゆ。甘い声で建前を維持しながらあなたの欲望を見透かす胡桃さくら。そして全員が集合する最終章。全チャプター通しで12回の射精。嘘だとわかっているのに、乗っかったほうが気持ちいい。その判断を下した瞬間、あなたは患者ではなく共犯者です。
見どころ1:手コキしながら健康診断する女

第1章、西元めいさのパート。私はここで完全にやられました。
何にやられたかというと、声です。「失礼しまーす」「反応しちゃっても大丈夫なので」「問題ないですね」。この人、最後まで敬語を崩さない。手コキしながら「最近はいつ射精されましたか?」って聞いてくるんですよ。健康診断のトーンで。普通に考えたらシュールでしょう。手コキしながら問診って何の状況?
でも笑えない。なぜかというと、声が本物すぎるんです。
健康診断に行ったことあるでしょう。採血のとき看護師さんが「ちょっとチクッとしますよー」って言うあの声。あの安心感。あれと同じ声で「勃起すると血流の流れが良くなるので健康にもいいんですよ」と言われる。身体がどう反応するか想像してみてください。冬の朝、凍った車のフロントガラスにぬるま湯をかけたときの、あの一気に溶けていく感じ。ずっと力が入っていた場所から、す、と力が抜ける。
で、行為が終わった後。「検査なのに気持ちよかったです」。このセリフに私はしばらく動けなかった。「検査なのに」。まだ検査と呼んでいる。ここまでやっておいて、まだ建前を手放さない。その律儀さが、逆にとんでもなくエロい。
見どころ2:「ちょっと待って、なんで先なの?」

第2章、北岡果林と逢沢みゆの2人パート。ここで予想外のことが起きます。
2人のナースが、挿入の順番で揉め始めるんです。
「ちょっと待ってなんで先なの?」「私の方が1年早く入社したでしょ」「でもやっぱり新人の研修のために先に新人が」。しゃべっている内容だけ聞いたら会社の会議室です。誰がプレゼンの先攻かを決めている新人研修。でも議題は「どっちが先に入れるか」。全員わかっている。検査じゃない。わかっているのに「検査なんだから」を手放さない。
ここで私は、笑いながら背筋がゾクッとするという初めての体験をしました。
なぜかというと、この2人の声の温度が全然違うんです。果林はクールで落ち着いていて「データにまとめておきますね」とか言う。みゆは甘くて積極的で「私にもやらせて」「ずるい」が止まらない。クールな声と甘い声が交互に、時に同時に押し寄せてくる。右耳と左耳で別々の曲を同時に聴いたことありますか。脳が処理しきれなくてクラクラするあの感覚の、もっと甘くて下半身に来るやつが交互に押し寄せてくる。休む暇がない。
で、決定的なセリフが来る。「検査なのにこんなにエッチなのやばいですね」。ナース自身が笑いながら言う。建前の向こう側がチラッと見える。全員がわかっていて、わかっていることをわかった上で、まだ「検査」と呼び続ける。この共犯関係の中にいる気持ちよさ。あなたも一度味わったら、もう抜けられません。
最後に:崩壊した嘘が、最後にもう一度閉じる

最終章。4人全員が集合して、建前は完全に崩壊します。「それみんな入れたいだけでしょ」。隠しもしない。笑いが起きる。「これ本当に検査ですよね」「検査のことじゃなくなっちゃうよ」。もう誰も検査だとは思っていない。
ここまでなら、よくある着地です。建前が壊れました、おしまい。
でもこの作品はそこで終わらない。
ラスト。4人が息を整えて言うんです。「これからも4人でしっかり検査していきますからね」「ちゃんと通ってくださいね」「よろしくお願いします」。
一度完全に崩壊した「検査」が、最後の最後で閉じ直される。
これ、映画で泣くのと同じ構造です。フィクションだと知っている。嘘だとわかっている。でも「もう一度検査と呼ぼう」と全員が合意したとき、その嘘はもう嘘じゃなくなっている。内輪だけに通じる合言葉になっている。
この作品を観終わった後、あなたは少し軽くなっているはずです。ずっとブレーキを踏み続けていた足から、力が抜けている。4人のナースに「大丈夫ですよ」と言われ続けた身体は、許可されることがどれほど気持ちいいかを覚えてしまっている。
そして次に健康診断の案内が届いたとき。「検査」という言葉に、かすかな甘さが混じるはずです。誰にも言えない。でも確実にそこにある。4人の声が、全部入っている。
あなたはもう、この病院の常連です。
